眉ティントと宇宙日傘とからす

眉ティントで眉毛を染めている最中は、どれだけ暗く深刻なことを考えていても眉毛が海苔のようになっていることをふと思い出してシリアスになりきれず笑ってしまう。

もともと眉毛は生え揃っているほうで、細眉が大流行していた思春期にほとんど根絶やしにしたつもりだったのだが、毛根たちは角質層の下で辛抱強く耐えぬき、どれだけ毛抜きで抜かれようとも日の目を見ることをあきらめずすくすくと生え、太めでナチュラルな眉毛をよしとするいまこの時代を我が世の春とばかりに謳歌している。

けれどもこれは年齢のせい? 日焼け止めを塗り顔が白むといっそう、パーツのすべての境界線が全体にぼんやりと曖昧になって背景に沈んでゆき、あるはずの眉毛も存在感が薄まって顔にもやがかかったようになる。化粧をすればもちろん解決するのだけど、近所以外に出かけない日には化粧などしたくない。眉毛を書くのすら無理。そんな要望にこたえるのが眉ティントで、べっとりした濃茶の液体を塗って2時間以上放置しておけば数日間は眉毛部分の皮膚が染まってくれて、化粧落としをせずともやがて落ちてゆく。ぼんやりの中にきりりとした一角が登場する。

眉ティントを使うのはもちろん家族以外の誰にも会わずに自宅にいるときなのだけれど、それにしたって眉をわずかにきりっとさせるためにこんなに面白い顔でいる時間を通過せねばならないのってなんなんだろうかと思う。

 

かねてより、日差しから我が身を完全に死守するため夏場にサンバイザー、アームカバー、長袖、サングラスなどを一式身につけ道ゆく人たちを見るにつけ、それほどの装備で外出するくらいなら多少日に焼けようが将来的にしみが増えようがぜんぜん構わないと思っていたが、ようやくわかった。これは他人なんてまじに無関係なおのれの視線との戦い。

私の顔に濃霧注意報が出ていても誰も困らないけど、何よりも私が困る。そのためにかなしみを打ち砕くほどの海苔眉毛状態をくぐり抜けている。

 

ところで日差しで思い出したが、最近買ったモンベルの日傘はなかなか調子がいい。モンベルによると紫外線遮蔽率が90%以上!なうえ軽いし、サイバー感のあるぎらぎらとした銀色でUFOなどを呼べそうな風情だ。

難点といえば、ワンアクションでしゃっと開いたり閉じたりしないのでものぐさには若干面倒に感じるところ。あと先日、この日傘をさして歩いていたら、羽を休めているからすとばっちり目があった。からすって光るものがお好きではなかったでしたっけ。もしかしてこの銀色に光る感じもお好き?などと考えながら襲われないように、からすを睨みつけ、その場を去った。今後この日傘をさすときにはからすに会いたくない。ものぐさとからすには要注意な日傘だった。